ステンレス鋼材(SUS)の成分について

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JIS規格によるステンレスの成分

ステンレス鋼材は、各メーカーによって微妙に成分や熱処理を変えることで独自性を出しています。したがって、成分を確認するにはメーカーのミルシートを確認するのが最も正確です。ただし、メーカー固有の名称が付いたステンレス鋼材であっても、例えばSUS430相当などのJIS規格でいうどのステンレス鋼材種に近いのかを示している場合も多く見られます。以下はJIS規格に定められている成分の一覧です。

オーステナイト系

主成分をクロムニッケル系とする唯一のタイプがこのオーステナイト系ステンレス鋼材です。ニッケルとクロムが合わさることで、ステンレスの最も特徴的な要素でもある表面の「酸化膜」の密着力がさらにあがるため、錆に強くなり、耐熱性も高まります。

オーステナイト系ステンレス鋼材(SUS)の成分
ステンレス鋼材の種類 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N その他
SUS301 0.15
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
6.00
〜8.00
16.00
〜18.00
- - - -
SUS301L 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
6.00
〜8.00
16.00
〜18.00
- - 0.20
以下
-
SUS301J1 0.08
〜0.12
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
7.00
〜9.00
16.00
〜18.00
- - - -
SUS302B 0.15
以下
2.00
〜3.00
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.00
〜10.00
17.00
〜19.00
- - - -
SUS303 0.15
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.20
以下
0.15
以上
8.00
〜10.00
17.00
〜19.00
0.60%
以下なら可
- - -
SUS304 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.00
〜10.50
18.00
〜20.00
- - - -
SUS304Cu 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.00
〜10.50
18.00
〜20.00
- 0.70
〜1.30
- -
SUS304L 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
9.00
〜13.00
18.00
〜20.00
- - - -
SUS304N1 0.08
以下
1.00
以下
2.50
以下
0.045
以下
0.030
以下
7.00
〜10.50
18.00
〜20.00
- - 0.10
〜0.25
-
SUS304N2 0.08
以下
1.00
以下
2.50
以下
0.045
以下
0.030
以下
7.50
〜10.50
18.00
〜20.00
- - 0.15
〜0.30
Nb
0.15以下
SUS304LN 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.50
〜11.50以下
17.00
〜19.00
- - 0.12
〜0.22
-
SUS304J1 0.08
以下
1.70
以下
3.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
6.00
〜9.00
15.00
〜18.00
- 1.00
〜3.00
- -
SUS304J2 0.08
以下
1.70
以下
3.00
〜5.00
0.045
以下
0.030
以下
6.00
〜9.00
15.00
〜18.00
- 1.00
〜3.00
- -
SUS305 0.12
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.50
〜13.00
17.00
〜19.00
- - - -
SUS309S 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
12.00
〜15.00
22.00
〜24.00
- - - -
SUS310S 0.08
以下
1.50
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
19.00
〜22.00
24.00
〜26.00
- - - -
SUS312L 0.020
以下
0.80
以下
1.00
以下
0.030
以下
0.015
以下
17.50
〜19.50
19.00
〜21.00
6.00
〜7.00
0.50
〜1.00
0.16
〜0.25
-
SUS315J1 0.08
以下
0.50
〜2.50
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.50
〜11.50
17.00
〜20.50
0.50
〜1.50
0.50
〜3.50
- -
SUS315J2 0.08
以下
2.50
〜4.00
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
11.00
〜14.00
17.00
〜20.50
0.50
〜1.50
0.50
〜3.50
- -
SUS316 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.00
〜14.00
16.00
〜18.00
2.00
〜3.00
- - -
SUS316L 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.00
〜14.00
16.00
〜18.00
2.00
〜3.00
- - -
SUS316N 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.00
〜14.00
16.00
〜18.00
2.00
〜3.00
- 0.10
〜0.22
-
SUS316LN 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.50
〜14.50
16.50
〜18.50
2.00
〜3.00
- 0.12
〜0.22
-
SUS316Ti 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.00
〜14.00
16.00
〜18.00
2.00
〜3.00
- - Ti:
5×C%以上
SUS316J1 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
10.00
〜14.00
17.00
〜19.00
1.20
〜2.75
1.00
〜2.50
- -
SUS316J1L 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
12.00
〜16.00
17.00
〜19.00
1.20
〜2.75
1.00
〜2.50
- -
SUS317 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
11.00
〜15.00
18.00
〜20.00
3.00
〜4.00
- - -
SUS317L 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
11.00
〜15.00
18.00
〜20.00
3.00
〜4.00
- - -
SUS317LN 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
11.00
〜15.00
18.00
〜20.00
3.00
〜4.00
- 0.10
〜0.22
-
SUS317J1 0.040
以下
1.00
以下
2.50
以下
0.045
以下
0.030
以下
15.00
〜17.00
16.00
〜19.00
4.00
〜6.00
- - -
SUS317J2 0.06
以下
1.50
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
12.00
〜16.00
23.00
〜26.00
0.50
〜1.20
- 0.25
〜0.40
-
SUS836L 0.030
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
24.00
〜26.00
19.00
〜24.00
5.00
〜7.00
- 0.25
以下
-
SUS890L 0.020
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
23.00
〜28.00
19.00
〜23.00
4.00
〜5.00
1.00
〜2.00
- -
SUS321 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
9.00
〜13.00
17.00
〜19.00
- - - Ti:
5×C%以上
SUS347 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
9.00
〜13.00
17.00
〜19.00
- - - Nb:
10×C%以上
SUSXM7 0.08
以下
1.00
以下
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
8.50
〜10.50
17.00
〜19.00
- 3.00
〜4.00
- -
SUSXM15J1 0.08
以下
3.00
〜5.00
2.00
以下
0.045
以下
0.030
以下
11.50
〜15.00
15.00
〜20.00
- - - 必要に応じてCu, Mo, Nb, Ti, Nを含有してもよい。

フェライト系

クロム系ステンレスで、ニッケルを含みません。このため、硫黄(S)を含むガスに対して高温環境下での腐食しにくいという特性や塩化物による応力腐食割れが発生しないという利点があります。ただ、ニッケルがない分、オーステナイトより耐食性は劣ります。

フェライト系ステンレス鋼材の成分
ステンレス鋼材の種類 C Si Mn P S Cr Mo N その他
SUS405 0.08以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 11.50〜14.50 - - Al 0.10〜0.30
SUS410L 0.030以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 11.00〜13.50 - - -
SUS429 0.12以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 14.00〜16.00 - - -
SUS430 0.12以下 0.75以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜18.00 - - -
SUS430LX 0.030以下 0.75以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜19.00 - - TiまたはNb 0.10〜1.00
SUS430J1L 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜20.00 - 0.025以下 Ti, Nb, Zr(単体もしくは組み合わせ)8×(C%+N%)〜0.80、Cu 0.30〜0.80
SUS434 0.12以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜18.00 0.75〜1.25 - -
SUS436L 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜19.00 0.75〜1.50 0.025以下 Ti, Nb, Zr(単体もしくは組み合わせ)8×(C%+N%)〜0.80
SUS436J1L 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 17.00〜20.00 0.40〜0.80 0.025以下 Ti, Nb, Zr(単体もしくは組み合わせ)8×(C%+N%)〜0.80
SUS445J1 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 21.00〜24.00 0.70〜1.50 0.025以下 -
SUS445J2 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 21.00〜24.00 1.50〜2.50 0.025以下 -
SUS444 0.025以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 17.00〜20.00 1.75〜2.50 0.025以下 Ti, Nb, Zr(単体もしくは組み合わせ)8×(C%+N%)〜0.80
SUS447J1 0.010以下 0.40以下 0.40以下 0.030以下 0.020以下 28.50〜32.00 1.50〜2.50 0.015以下 -
SUSXM27 0.010以下 0.40以下 0.40以下 0.030以下 0.020以下 25.00〜27.50 0.75〜1.50 0.015以下 -

マルテンサイト系

炭素が少ない為、比較的耐食性には劣るタイプのステンレスとされていますが、熱処理(焼入れ)をすることによって、硬度を上げることができます。クロム系ステンレスです。

マルテンサイト系ステンレス鋼材の成分
ステンレス鋼材の種類 C Si Mn P S Cr
SUS403 0.15以下 0.50以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 11.50〜13.00
SUS410 0.15以下 0.50以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 11.50〜13.00
SUS410S 0.08以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 11.50〜13.50
SUS420J1 0.16〜0.25 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 12.00〜14.00
SUS420J2 0.26〜0.40 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 12.00〜14.00
SUS440A 0.60〜0.75 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 16.00〜18.00

二相ステンレス

このタイプは金属組織にフェライト系とオーステナイト系の二つの相が見られるもので、応力腐食割れに強いという特徴があります。

オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレス鋼材の成分
ステンレス鋼材の種類 C Si Mn P S Ni Cr Mo N
SUS329J1 0.08以下 1.00以下 1.50以下 0.040以下 0.030以下 3.00〜6.00 23.00〜28.00 1.00〜3.00 -
SUS329J3L 0.030以下 1.00以下 2.00以下 0.040以下 0.030以下 4.50〜6.50 21.00〜24.00 2.50〜3.50 0.08〜0.20
SUS329J4L 0.030以下 1.00以下 1.50以下 0.040以下 0.030以下 5.50〜7.50 24.00〜26.00 2.50〜3.50 0.08〜0.30

析出硬化系ステンレス

熱処理をすることで特に硬くしてあるステンレスで、その組織上から、マルテンサイト系のSUS630、セミオーステナイト系のSUS631の二つが現在は規格として規定があります。

析出硬化系ステンレス鋼材の成分
ステンレス鋼材の種類 C Si Mn P S Ni Cr Cu その他
SUS630 0.07以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 3.00〜5.00 15.00〜17.00 3.00〜5.00 Nb 0.15〜0.45
SUS631 0.09以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 6.50〜7.75 16.00〜18.00 - Al 0.75〜1.50

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