SUS201の特性と主な用途
SUS201はNiを節約し代わりにMnを増やしたタイプです。成分組成は、17Cr-4.5Ni-6Mn-Nとなります。JIS規格では棒材、線材にのみ規定されています。SUS301の廉価版とも言える代替鋼として開発されました。完全な代替性は期待できないため、非磁性鋼の一つとして、あるいは耐熱材料の一つとして検討されることが多いといえます。磁性はありませんが、冷間加工により磁性を持ちます。
ニッケルは高価な工業材料のひとつですが、用途の広さに比べて産出量も不足しがちで、価格や需給バランスの不安定さによってステンレス価格を左右する要因とされてきました。
正確にはニッケルをマンガンと窒素で置き換えるというコンセプトの元に作られたステンレスではありますが、実際には期待されたほど低価格にはならず、そこまで普及もしていないのが実情です。
耐食性については、通常のクロム−ニッケル系ステンレスに比べると劣ります。というのも、マンガン自体には耐食性を向上させる効果がほとんど無いとされるためです。耐候性についてはSUS304と同等とする報告も出されています。
窒素を多く含むことから高温強度についてはSUS300系をしのぐとされていますが、高温酸化については逆に劣るため、使用可能な限度は800℃〜850℃付近とされています。溶接性については300系と同等と考えられています。
また耐力の高さから、冷間加工にあたっては強力な設備が必要となります。加工硬化の大きさについてはSUS301と類似していますが、SUS201のほうがさらに加工硬化は大きくなります。
SUS201の化学成分
ニッケルを減らす目的で開発された材料であるため、SUS201で代替を目指したSUS301に比べ、ニッケルを減らす代わりにマンガンと窒素が多く入っています。炭素量とクロム量もSUS301と同等となっています。
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SUS201 | 0.15以下 | 1.00以下 | 5.50から7.50 | 0.060以下 | 0.030以下 | 3.50から5.50 | 16.00から18.00 | - | - | 0.25以下 | - |
SUS201の機械的特性
以下に文献値からの引張強さ、耐力、伸び、硬さと規格値との比較を表でまとめます。SUS201は加工硬化が強く出ることもあり、代替を目指したSUS301よりも強い強度を持ち、反面、伸び等が値が低く加工性が低下しています。
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 硬さ |
---|---|---|---|---|
HRB | ||||
SUS201 | 377 | 805 | 56 | 90 |
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 絞り(%) | 硬さ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
HBW | HRBS又はHRBW | HV | |||||
SUS201 | 275以上 | 520以上 | 40以上 | 45以上 | 241以下 | 100以下 | 253以下 |
SUS201の物理的性質|ヤング率、比熱、電気抵抗率、弾性係数、熱膨張係数、融点
物理的な性質面では、他のSUS300系の材料と特筆すべきほどの差は見られません。
特性 | ステンレスの種類 |
---|---|
SUS201 | |
密度(g/cm3) | 7.93 |
ヤング率(MPa) | 197000 |
比熱(J/kg・℃) | 0〜100℃:503 |
電気抵抗率(10-8Ω・m) | 69 |
弾性係数(103N/mm2) | 197 |
線膨張係数(10-6/℃) |
0〜100℃:15.7 0〜315℃:17.5 |
熱伝導率(W/m・℃) | 100℃:16.3 |
融点(℃) | NA |
SUS201の磁性
非磁性鋼のため、磁石にはつきませんが、冷間加工すると磁性を持ちます。加工硬化の度合いが高い材料のため、冷間加工を行う際には留意すべきです。
SUS201の相当材
類似の対応規格材料としては、ASTM規格のS20100、EN規格の1.4372、ISO規格のX12CrMnNiN17-7-5のいずれもSUS201に相当する海外規格の材料となります。