SUS302はステンレスの種類のうち、JIS規格では棒材、線材、ばねとして規定されている材料です。炭素を多く含む高Cタイプのオーステナイト系ステンレスで、SUS302はSUS301と並ぶ代表鋼種です。SUS304に比べると炭素量が多い分、強度も優れています。
成分上は、18Cr-8Ni-0.1Cの構成を持ち、加工硬化が色濃く出ることもあり、冷間加工によってさらに高強度になります。伸びはSUS301よりやや劣ります。SUS304に似ているため、同じ用途が多いものの、建築材のうち外装材としての用途等で知られます。
準安定オーステナイト系になり、加工硬化が大きいことが最大の特徴とも言えます。
板材としてはSUS302BがJISでは規格化されています。こちらは耐熱性や耐酸化性を売りにした鋼種となります。
SUS302の耐食性
SUS304に似ていますが耐食性は若干劣り、硝酸をはじめとする酸化性の酸には強いですが、硫酸、塩酸といった非酸化性の酸には特に弱いです。また塩化物をはじめとする塩害にも弱いため、海浜環境での使用は考え物です。
SUS302の化学成分
オーステナイト系ステンレスの源流とも称される成分組成をしていますが、それもそのはず、SUS304も元はSUS302を基本として作られています。高炭素タイプのステンレスです。板材規格にあるSUS302Bとの成分上の違いはシリコンの比率です。
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SUS302 | 0.15以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 8.00から10.00 | 17.00から19.00 | - | - | - | - |
SUS302の機械的特性|強度、引張強さ、耐力、伸び、絞り、硬度
冷間圧延率の増加により硬度が増していく性質があり、こうした加工硬化の度合いが大きく、引張強さも連動して上昇していきます。SUS301のほうが低い加工度でより硬くなりますが、SUS302はそれよりは劣るものの、SUS304より加工硬化度が大きく、中間の位置づけといえます。
下表に、文献値での強度指標と、規格での規定値を紹介します。
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 硬さ |
---|---|---|---|---|
HRB | ||||
SUS302 | 276 | 621 | 50 | 85 |
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 絞り(%) | 硬さ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
HBW | HRBS又はHRBW | HV | |||||
SUS302 | 205以上 | 520以上 | 40以上 | 60以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS302の物理的性質|ヤング率、比熱、電気抵抗率、弾性係数、熱膨張係数、融点
物理的性質のほとんどはSUS304と似ています。下表にSUS302の密度、ヤング率、比熱、電気抵抗率、縦弾性係数、横弾性係数、熱膨張係数、融点について一覧にしています。他の鋼に比べれば熱伝導率が小さく、熱膨張係数も大きい特徴があります。
特性 | ステンレスの種類 |
---|---|
SUS302 | |
密度(g/cm3) | 8.03 |
ヤング率(MPa) | 193000 |
比熱(J/kg・℃) | 503 |
抵抗率(10-8Ω・m) | 72 |
縦弾性係数(103N/mm2) | 193 |
横弾性係数(103N/mm2) | 86.2 |
熱膨張係数、平均線膨張係数(10-6/℃) |
0〜100℃:17.2 0〜315℃:17.8 0〜538℃:18.4 0〜648℃:18.8 |
熱伝導率(W/m・℃) | 16 |
融点(℃) | 1398から1420℃ |
SUS302の磁性
焼きなましの状態では磁性はありませんが、冷間加工により磁性をもつようになります。同じ高Cオーステナイト系のSUS301は冷間加工によってかなり強い磁性を持ちますが、SUS302の磁性はそこまで強くはなりません。
SUS302の相当材
ASTMではS30200がSUS302の相当材となります。ENやISOには相当材がありません。