酸化皮膜と不動態化−ステンレスはなぜ錆びにくいか?
錆とは、腐食のことであり鉄系の材料が大気中の酸素や水分と反応して、安定した状態に戻ろうとすることから起きる現象です。
ステンレスも鉄が主成分となっている以上、この錆とは無縁ではないのですが、この材料を錆びにくくしているものが、酸化皮膜といわれる薄膜です。ステンレスの表面には含有されているクロムの働きによって薄い膜が生成されており、仮に剥がれても酸素と反応してまた修復していく性質をもちます。これは厚さわずか1〜3nm程度と言われており、保護膜として内部の合金、金属の腐食を防ぐと言われています。
こうした現象を、ステンレスが不動態化するともいいます。厳密にいえば、鋼の表面には1〜3nm程度の薄いクロムの水和酸化物もしくはオキシ酸化物を主な成分とする緻密で化学的に安定した保護皮膜がある状態です。
この酸化皮膜のことを不動態皮膜ともいいます。ある意味、この現象こそがステンレスをステンレスたらしめている最も特徴的なものとも言えます。
ステンレスは他の鉄鋼材料に比べて腐食しにくいですが、完全に腐食に耐性があるわけではありません。特定の状況下で発生する腐食の問題は、このステンレスの表面をナノオーダーで覆っている酸化皮膜(不動態皮膜)が壊れることから起きます。この皮膜は部分的に破れても、すぐに周囲の酸素などと反応して修復されるため、ステンレスをさらに錆びにくいものにしていますが、環境によっては酸化皮膜の再生がうまくできない場合があり、それが腐食(錆び)につながります。