SUS202の特性と主な用途
SUS202はオーステナイト系ステンレスのうち、成分組成を18Cr-5Ni-8Mn-Nとするもので、Niを節約したタイプです。Niの代わりにMnやNを添加元素に含みSUS302の代替鋼として開発されたステンレスです。
JIS規格では棒材のみが規定されています。
用途としては、料理用具や調理器具として使われます。ニッケルを節約するというのは、この元素が需給バランスの関係から価格に影響しやすいためで、廉価なステンレスを目指して開発されていた経緯があるためです。
ただSUS302と完全な互換性はなく、耐食性が劣っていたり、加工硬化が強く出るなどの違いがあります。溶接性については302と同等と考えて差し支えないレベルで、溶接部の性質についてもさして違いはありません。
同系統のSUS201に比べると引張強度が弱くなっており、成分についてはマンガンの含有量が多くなります。
SUS202の化学成分
SUS201に比べるとマンガン量が多く、ニッケルの基準も若干高めです。SUS302の代替材として想定されているステンレス材料となります。
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SUS202 | 0.15以下 | 1.00以下 | 7.50から10.00 | 0.060以下 | 0.030以下 | 4.00から6.00 | 17.00から19.00 | - | - | 0.25以下 | - |
SUS202の機械的特性
SUS202で代替することを目指したSUS302と比べると、強度や硬さが高くなっています。冷間加工もSUS202のほうが高くなります。以下、文献値とJISの規格値の一覧表となります。
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 硬さ |
---|---|---|---|---|
HRB | ||||
SUS202 | 377 | 720 | 55 | 90 |
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 絞り(%) | 硬さ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
HBW | HRBS又はHRBW | HV | |||||
SUS202 | 275以上 | 520以上 | 40以上 | 45以上 | 207以下 | 95以下 | 218以下 |
SUS202の物理的性質|ヤング率、比熱、電気抵抗率、弾性係数、熱膨張係数、融点
基本的な物理的性質はSUS201と大きくは変わりません。
特性 | ステンレスの種類 |
---|---|
SUS202 | |
密度(g/cm3) | 7.93 |
ヤング率(MPa) | NA |
比熱(J/kg・℃) | 0〜100℃:503 |
抵抗率(10-8Ω・m) | 69 |
弾性係数(103N/mm2) | 197 |
熱膨張係数(10-6/℃) |
0〜100℃:17.0 0〜315℃:18.4 |
熱伝導率(W/m・℃) | 100℃:16.3 |
融点(℃) | NA |
SUS202の磁性
非磁性鋼のため、磁石にはつきませんが、冷間加工すると磁性を持つことがあります。
SUS202の相当材
類似の対応規格材料としては、ASTM規格のS20200、EN規格の1.4373がSUS202に相当する海外規格の材料となります。ISO規格ではSUS201はあるものの、現状ではSUS202相当材はありません。