添加元素が鋼に及ぼす影響

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元素が足されることで、生まれ変わるステンレス

SUSも特殊用途の鉄鋼材料の一つですが、この鉄鋼がただの鉄と違うのは、添加される合金元素により、もともとの性質から様々な付加価値を持った材料に変化するからです。この元素は、単独で効果を見せるものもあれば、特定の元素同士を組み合わせて使うことで、相乗効果や新たな特性が発現するものもあります。他の鉄鋼材料と同じく、ステンレスも「成分」と「熱処理」によって様々な顔を見せてくれます。以下に、鉄鋼材料に添加されることの多い元素別に、主要な作用について述べていきます。

ケイ素 Si

鋼の耐熱性が高まります。ただし添加限度を超えると脆くなります。電気伝導性も高まります。0.2〜0.6%の範囲ならば、伸びが減少せずに弾性限と引張強さが増加すると言われています。また脱酸作用があります。

ニッケル Ni

粘りと強度が高まります。添加量が増えれば耐熱性も上がります。クロムとニッケルを合わせて添加することで、耐食性、耐熱性が高まります。オーステナイト系ステンレスに欠かせない元素で、クロムと組み合わせることでクロムから生成される酸化膜の密着力を上げる効果も持ちます。このため、耐食性があがります。また、耐熱性も付与します。

クロム Cr

ニッケルと似た作用を持ち、少量の添加で耐摩耗性が上がります。量を多くすることで、耐食性、耐熱性が向上します。ステンレスにとっては最も重要な酸化皮膜(不動態皮膜)をつくる源です。その他、鉄鋼のなかでクロムは炭化物を生成するため、鋼の焼き入れ性が高まります。くわえて、焼き戻しによる軟化も防ぎます。酸化皮膜により、耐酸化性や、高温にも強くなります。

マンガン Mn

鋼の靭性(じん性)や引張強さを増加させます。機械的性質の向上についてはSiと、じん性についてはNiを似た効果を持ちます。常温ではオーステナイト組織を持ち、炭素鋼などの靭性を高めて、遷移温度を低くする作用もあります。炭素量を低めにし、マンガンを増やすことで引張強さを損なわずに靭性も高い状態を維持できます。 鉄には有害とされるS(硫黄)と親和性がよい元素です。組織中の不純物除去のために、意図的にMnSを生成させ、取り除くことにも使われます。

硫黄 S

鉄には有害とされ、これは鉄と反応するとFeSを生じるからと言われています。この物質は融点が低い為、赤熱ぜい性の原因となると言われますが、快削鋼のようにSを増やすことで鋼の中の硫化物を生成させて加工性を上げる工夫もあります。

モリブデン Mo

少量添加することで粘り強さが出ます。高温での強度、硬度が増します。また焼入れ性を上げて、焼き戻しによる軟化や脆化を防ぐ効果もあります。クロムと組み合わせて使われることが多いです。また溶接割れを抑えたり、降伏点を高めることもできます。

タングステン W

高温での強度、硬度が増しますが、モリブデンよりは効果が弱いです。

バナジウム V

モリブデン、タングステンと同様に、硬度、強度(降伏点、引張強さ)が増します。他の添加元素、例えばMnと組み合わせて使われることが多く、さらに強力な硬度・強度が得られます。ただし加え過ぎると、切欠きじん性や硬化性が悪化するとされます。

コバルト Co

ニッケルと似た作用を持ち、粘り強さ、耐食性、耐熱性が増します。他の元素と合わせて使用されます。

チタン Ti

表面を硬化させ、耐食性を上げることができます。鋼の時効性(時間とともに鉄鋼中の元素が一箇所に集まったり、化合物として析出することで性質が変化してしまう現象)を抑える効果もありますので、低温じん性の向上にも寄与するとされます。

銅 Cu

大気中や海水中での耐食性が上がります。ニッケルと一緒に添加することで効果が倍増します。鉄の表面に非晶質皮膜をつくることができ、これにより耐侯性が上がります。

ニオブ Nb

ニッケルやコバルトと同様に粘り強さが向上します。

ホウ素 B

微量で全体を硬化させることができます。

アルミニウム Al

表面を硬化させる効果があります。また強力な脱酸作用があります。黒鉛化を促進するという側面も持ちます。

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