ステンレスは900℃以上の環境ではほとんど使われない
特殊用途の鉄鋼材料には、SUHに分類される耐熱鋼がありますが、SUSであっても耐熱性はあります。この場合、高温の環境下におかれたときに機械的な性質がどのように変化するのかに着目します。一般に、500℃程度までであれば、どのステンレス鋼材であっても引張り強さについてはあまり減衰することもありませんが、これを超えると急に強度が落ちてきます。特にオーステナイト系に比べると、マルテンサイト系、フェライト系は高温下での機械的強度の落ち込みが激しくなります。耐力も引張り強さと同様です。また高温下での耐酸化性も問題となりますので、あわせて見ていく必要があります。
こうした高温下での機械的強度は、引張り強さや耐力だけでは限度がわかりにくいため、特に500℃を超えるような環境下ではクリープ強さやクリープ破断強さに着目します。この値が許容応力値を求める基準値として使われます。 クリープとは、見かけ上の降伏点以下の小さな応力であっても、一定時間経つと伸びていくような現象をいいます。また高温下での機械的特性として注目すべき点として金属の疲労も忘れられない要素です。
オーステナイト系の耐熱性
一般に550℃を超える温度帯域で優れた機械的性質を示しますが、約600℃〜980℃以上の長時間加熱すると、常温や低温でのじん性が低下すると言われています。 SUS304にSiを添加して耐酸化性を高めたSUS302Bや、CrとNiの添加量を増やすことでSUS309SやSUS310Sがあります。
フェライト系の耐熱性
500℃を超えると急に強度が落ちてきます。また高温環境下では脆化現象を起こすこともあり、こうした環境下での構造材料としてはあまり使われない傾向にあります。特に870℃を超えるような環境では非常にもろくなります。
マルテンサイト系の耐熱性
500℃付近まではかなり強い引張強さを示しますが、これを超えると強度が急に低下してきます。添加元素に、モリブデンやバナジウム、タングステン、ニオブなどを入れて高温強度を改善したタイプもあります。
析出硬化系の耐熱性
元来、常温(主として550℃以下)での強度を高めたタイプのステンレス鋼材材ですので、450℃を超えると高温強度は低下してきます。温度が高くなりすぎない環境であれば、優れた強度を持ちますので、温度帯域を絞って使われることが多いです。