SUS304Lの特性と主な用途
18Cr-9Ni-低C型の組成を持つタイプで、SUS304のうち、炭素の含有量を減らした極低炭素鋼です。耐粒界腐食性に優れ、溶接後熱処理できない部品類にも使われます。
SUS304では炭素量は一般に0.06%程度ですが、これを0.03%まで絞り込んだのがSUS304Lです。ステンレスの錆にくさを作り出しているのはクロムとなりますが、ステンレス鋼材が600℃から800℃前後に加熱されると、材料含まれている炭素とクロムが反応し、クロム炭化物が生成されます。これによって内部のクロムが食われてしまい、クロムの濃度が下がって耐食性が下がるため、クロムと結びつく炭素を減らすという発想で作られたステンレスのグレードです。
末尾にLがついているステンレス鋼種はLグレードとも呼ばれ、Lがついていない種類よりも加熱時のクロム濃度低下によって耐食性低下となる「鋭敏化」と呼ばれる現象が起き難い鋼種です。鋭敏化は650℃前後で発生するため、溶接時には注意を要します。平たく言えば、SUS304に比べ、SUS304Lは溶接などした際に見られる粒界腐食に強いため、こうした腐食が原因の錆には強いと言うことができます。
SUS304Lの相当材、相当品
JIS規格品となるSUS304Lの海外規格における相当品は下記となります。
ISO規格に対応する相当ステンレス鋼はX2CrNi18-9やX2CrNi19-11となります。
AISI規格に対応する相当材は、304Lとなります。
ヨーロッパ規格のENでの相当材は1.4307、1.4306となります。
化学成分
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SUS304L | 0.030以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 9.00〜13.00 | 18.00〜20.00 | - | - | - | - |
機械的特性
材料記号 | 耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 硬さ | ||
---|---|---|---|---|---|---|
HBW | HRBS又はHRBW | HV | ||||
SUS304L | 175以上 | 480以上 | 40以上 | 187以下 | 90以下 | 200以下 |
SUS304Lの孔食指数(PRE)
以下の計算式で算出されるSUS304Lの耐孔食指数は、18〜20となります。孔食はピット状の小さな穴があいたように発生する腐食で、錆に強いステンレスの弱点のひとつですが、こうした孔食や隙間腐食と呼ばれる錆を発生させる現象にどの程度強いかを見るための指標となります。英語では耐孔食指数をpitting resistance equivalent、略してPREと表記します。
18 = 18 + 3.3 x 0 x 16 x 0
孔食指数=Cr(%)+ 3.3 x Mo(%) + 16 x N(%)