ステンレスは錆びにくさをその特徴の第一とする特殊鋼ですが、ステンレスの中にも様々な種類があり、腐食や錆に強いものとそうではないものがあります。また、いくら錆に強いといっても、ステンレスにとって弱点とも言える腐食がいくつかあり、後述する「孔食」と「隙間腐食」もそれらの一つです。耐孔食指数とはこの錆びにくさを数字で示したものです。
ステンレスが錆びるのは、酸素等と反応して表面にできる不動態皮膜と呼ばれる膜が破壊され、元に戻らない場合です。
腐食や錆というのは、さらされることになる環境によっても発生の頻度やレベルは大きく違いますが、ステンレスに限っていえば、この膜の破壊が全面に起きることはなく、部分的に破壊される部分腐食となります。こうした部分腐食の代表格に、「孔食」(こうしょく)と呼ばれる穴状の腐食があり、ピットと呼ばれる小さな穴がステンレス表面にできてきます。
こうした孔食や隙間腐食は、ステンレスごとの成分によって発生しやすさが違います。この孔食などの腐食にどれくらい強いかを示す指標が孔食指数や耐孔食指数と呼ばれる指標で、英語ではPitting Resistance Equivalentと呼称されるため、頭文字をとってPREとも略されます。
孔食指数の値は、以下の計算式で求めることができます。
耐孔食指数(PRE)= [Cr(%)]+[3.3 x Mo(%)] + [16 x N(%)]
見てのとおり、クロムとモリブデン、窒素が成分としてどれだけ含有しているかを見る指数でもあります。これら3つの成分が多いほど、孔食や隙間腐食といったステンレスが苦手とする腐食が起き難いステンレスということになります。
孔食は海水などの塩化物イオンが多い環境では特に発生しやすいため、海水で使うことができるステンレスを選ぶ指標としても使うことができます。一般に、耐孔食指数(PRE)が40を超えていれば、海水中でも腐食や錆に強いステンレスであると言うことがいえます。
ただ、孔食指数が高いステンレスほど価格も高価になるため、使いどころを考えた上で選択する必要はあります。
ステンレスの種類 | 耐孔食指数 |
---|---|
SUS304 | 18 |
SUS304L | 18 |
SUS304N1 | 19.6 |
SUS304N2 | 20.4 |
SUS316 | 26.3 |
SUS317 | 27.9 |
SUS312L | 41.36 |
SUS329J1 | 26.3 |
SUS329J4L | 33.53 |
SUS430 | 16 |
なお、二相系ステンレスの耐孔食指数を計算する方法としては、以下も提案されています。
PRE = Cr + 3.3Mo + 30N - Mn
マンガンは孔食に対しては有害なため、係数1で差し引くという内容となっています。
さらに、タングステンを含む鋼種についてはこちらも孔食への耐性向上へ貢献するということで、以下のような式も発案されています。
PRE = Cr + 3.3Mo + 3.3/2*W + 30N - Mn
Nについては16を採用する計算方法が主流となっていますが、16〜30まで幅のある式が提起されています。
PRE = Cr + 3.3Mo + 16〜30*N
フェライト系の場合はNは0として計算します。